日本政府「経済審議会経済主体役割部会報告書」平成10年6月(1998年)
  --------------------------------------------
はじめに。
    日本経済は、大きな潮流変化の中で、これまでは有効に機能してきた各システムが十分に機能しなくなってきており、それがこのところの低迷状態の一因となっている。従来の制度の中に合理性を失っているものがあることに加え、現在進められている改革の重要性は認識されているものの、変革に伴うリスクや低成長による限られたパイの奪い合いが予感され、高度成長期の経験との違和感も相まって国民の間に閉塞感や漠然とした不安感をもたらしている。
    こうしたことの背景には、既得権益や協調性のメリットへの過剰な固執、変革に伴うリスクの回避、システム自体の硬直性等のために、改革に向かおうとするダイナミズムに欠けていることがあげられる。その他に、市場の中に過剰な規制が残存していること、政府と民間のガバナンスが非効率であることといった要因も考えられる。
    このような要因を取り除き、日本経済を全体としてうまく機能するように、変化する潮流に合ったシステムに再構築していく必要がある。そこで、現行のシステムの問題点を明らかにした上で、改革の過程や改革後の各経済主体のあり方に関して、一つの羅針盤となることを願って、この提案を行うこととする。
-----------(中略)---------------------------------- 第1章 現在の経済社会の問題点。
   2.潮流変化に対する適合性の欠如
      (2)個人(自己責任意識の不足)
    各経済主体間の長期的かつ安定的な相互依存関係のデメリットは、個人については行政や企業への過度の依存、その裏返しとして不都合な結果が生じた際の結果の不平等に対する責任の転嫁といった形でみられる。裁量的な行政関与の下では、個人のとる行政依存のスタンスによっては、公的規制の存続が助長されたり、あるいは規制緩和の効果が薄められるような結果がもたらされる。
    企業との関係においても同様であり、情報開示が徹底されていない状況下で、自己の判断を伴わない財・サービスの選択を行った上で、その結果に対する責任を他者に転嫁するという傾向がみられてきた。いずれにせよ、個人の間に自己責任意識が欠如している、あるいはその能力が十分備わっていないことが指摘される。
 ---------(中略)---------------------------------- 第2章 システム再構築の方向性と経済主体。
   2.経済主体の役割はどう変わるか。
      個人は、自己実現に向け意欲を持って能力発揮を果たし、リスクとリターンを自己管理しつつ、自己責任を基本とした行動をとる。すなわち、意欲的に職業選択や職業能力の向上に努め、職業生活の各方面にわたって自由に活動していくことが求められる。また、職業生活以外でも、市民参画等への役割が期待される。消費者、投資家の立場としては、より多くの商品・サービスの選択肢を持つ機会を得ることとなろうが、同時に自らが行った選択についての自己責任を求められる。もちろん、教育システム、教育制度を含めた、個人が自立していくための基礎的インフラの再構築は忘れてはならない。
-------(中略)------------------------------------ 第3章 システムを再構築するために何をなすべきか(提案)
   3.個人の自立を支える環境整備
       個人においては、各々の価値基準に従って主体的に選択することにより、自己実現を図ることが可能なシステムの構築が望まれるが、同時にこのシステムの下ではリスク管理等の自己責任が求められる。
       就業について、各人の意欲と能力が十分に発揮され、自己実現が図られるためには、企業の経営状態や今後の事業展開等に関する情報をも踏まえ、職業やキャリアを主体的に選択していくことが求められる。このことは、個々人が常に職業能力の向上に努めることによって可能となるものであり、そのための環境整備が必要である。
   4.負担と受益の明確化による多様なニーズに応える効率的な行政の確立
第三セクター方式の見直し
    第三セクターにおける官民の役割やリスク分担を明確化し、双方の特性が生かせる協力関係の構築が必要。また、経営の見通しの立たない第三セクターは、すみやかに破産手続も含めた抜本的対策を検討すべき。さらに第三セクターの新設に当たっては、経営破綻時の処理も含めた官民の役割やリスク分担、経営評価の手順、地方公共団体による支援と関与の基本方針等をあらかじめ明確化しておくことが必要。
   A 第三セクター方式見直しの視点
       今後の社会資本整備における民間活力導入に当たっては、運営の非効率が指摘されている第三セクターの問題点を踏まえ、官民の役割やリスク分担を明確化し、双方の特性が生かせる協力関係を構築していくことが望まれる。
       現在、地方自治法の規定に基づき、地方公共団体が4分の1以上を出資する法人については監査委員による監査等が行われているが、第三セクター運営の健全性を確保していくためには、第三セクター自身が住民に対し積極的に経営情報を開示し、運営に関する説明責任(アカウンタビリティ)を果たしていくことが重要である。
       既存の第三セクターのうち経営の見通しの立たないものについては、公的資金の投入等により対策の先送りをするのではなく、すみやかに、破産手続も含めた法的処理を始めとした抜本的な対策を検討すべきである。経営を継続するものについても、公共の利益と民間の営利性との調整を図る経営形態としての第三セクターがふさわしいのかを再検討する必要がある
       さらに、今後の第三セクターの設立に際しては、経営破綻時の処理も含めた官民の役割やリスク分担、経営評価の手順、地方公共団体による支援と関与の基本方針等をあらかじめ明確化しておくことが必要である。
---------(後略)-------------------------------------
以上。